ヘルプ ~心がつなぐストーリー原作は実話?キャスト相関図とネタバレあらすじ感想・考察

映画

今回ご紹介するのは「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」
キャスリン・ストケットの小説を実写化した2011年公開のアメリカのドラマ映画です。
現在視聴することができるのはAmazonprimeでレンタルで配信されています。

「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」は1960年代の公民権運動を背景とし、ミシシッピ州ジャクソンに住む若い白人女性のスキーター(エマ・ストーン)と黒人のメイドの関係を描いた感動的でなおかつ風刺的ニュアンスも含んだ話題作です。

人種差別がテーマになっていて、重い内容?と思っていましたが、黒人メイドに育てられた白人女性が白人社会に疑問を持ち行動を起こす、という変った視点での取り組みが興味深く面白い作品になっています。

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ヘルプ ~心がつなぐストーリー原作は実話?

「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」は実話なのか?
この映画が公開された当初、これが実話か、創作か?で話題になりました。

原作はキャスリン・ストケットのデビュー小説で2009年に出版されました。キャスリン・ストケット自身の経験をベースに実話を織り込みながら5年を費やして書き上げた作品は人種差別がテーマだったことから、多くの出版社から出版を断り続けらた問題作でした。

そんな作品が映画化されたのは、作者キャスリンの幼馴染で監督をしているテイト・テイラーの励ましがあったからだそうです。やっと出版が決まった時にはキャスリンは出版前に映画化の権利をテイト・テイラーに渡しました。実話を含むこの物語は、原作も映画化も友人に支えられて叶った作品でとなりました。

多くの出版社から出版を断り続けられた「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」は、いざ蓋を開けてみると全米では1130万部をを売り上げるミリオンセラーとなりました。
また映画においても興行収入は1億7500万ドルを超え1位を獲得し、大ヒットを記録しました。

作品は第84回アカデミー賞4部門にノミネートされました。そして、主要キャスト「ミニー」役を務めたオクタヴィア・スペンサーはアカデミー最優秀助演女優賞を受賞したのです。

なぜ、ここまでのヒット作品になったのか?
「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」が実話と紹介されるのは、原作者であるキャスリン・ストケットが小説の舞台であるミシシッピー州ジャクソンの出身である事と、実際に黒人メイドに育てられた、という実話を織り交ぜて描いた作品だからです。

自身の経験とモデルになった実在の人物もおり、それらをベースに書かれた小説。
しかも、それがほんの50年くらい前の時代に普通に存在していたという事が、メイドを雇った生活を経験していない人々の層にはかなり響いたのではないでしょうか?

創作されてはいても、実話でもあったという事が観る人の心に刺さるものがあるのでしょう。

ヘルプ ~心がつなぐストーリーキャスト相関図

【主要キャスト紹介】


スキーター エマ・ワトソン

社会の矛盾に疑問を抱きながらも、それに激しく抵抗するのではなく、ひそかに正しい道を探そうとするスキーター。「エマ・ストーン以外にスキーターを演じられる女優はいないでしょう」と、エマの持つ繊細な知性と純粋さにテイト・テイラー監督も太鼓判を押す。

1988年生まれ、アリゾナ州スコッツデール出身
出演作品
『ゾンビランド』(09)/主演作『小悪魔はなぜモテる?!』でゴールデングローブ賞にノミネート。
MTVムービー・アワード2011のベスト・コメディ・パフォーマンス賞を受賞。
『アメイジング・スパイダーマン』では主人公ピーターの運命の恋人グウェン・ステイシー役を務め、今、ハリウッドで最も注目される若手女優。


エイビリーン ヴィオラ・デイヴィス

本作の真の主人公とも言えるエイビリーン。複雑な想いや心の傷を内に秘めた難しい役を静かな存在感で演じる

幅広い役柄を演じてきた演技派
出演作品
『ダウト~あるカトリック学校で~』(08)でアカデミー賞助演女優賞にノミネート
ブロードウェイの舞台では『King Hedley II』(01・助演)と『Fences』(10・主演)で二度のトニー賞に輝く。
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
『食べて、祈って、恋をして』
『ナイト&デイ』など多数。


ミニー オクタヴィア・スペンサー

2009年にはエンターテインメント・ウィークリー誌が彼女の持つ笑いの呼吸のセンスを賞賛し、「ハリウッドで最も面白い女優25人」に選出している

テレビ、映画に引っ張りだこの個性派女優
出演作品
サンドラ・ブロックと共演した映画『評決のとき』で女優デビュー。
『マルコヴィッチの穴』
『スパイダーマン』
『コーチ・カーター』
「アグリー・ベティ」シリーズにコンスタンス・グラディ役で5つのエピソードに登場する


ヒリー ブライス・ダラス・ハワード

ヒリーはスキーターやエイビリーンを苦しめる理不尽な社会を象徴する存在、必ずしも悪役イメージのある女優ではなかったが、「ヒリー役に不可欠なカリスマ性がある」

出演作品
『スパイダーマン3』グウェン・ステイシー役
『ターミネーター4』
『エクリプス/トワイライト・サーガ』
『ヒア アフター』など話題作に出演


シーリア ジェシカ・チャステイン

大邸宅に住む超美人で性格は鈍感なKY…というキャラクターにもかかわらず観客の共感を呼べる人物として、ジェシカ・チャステインはシーリアを見事に演じた
エグゼクティブ・プロデューサー/脚本家として『ER 緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』といったテレビシリーズも手がける才女

出演作品
『ツリー・オブ・ライフ』
『Caught in Flight』
『女神の見えざる手』
『355』注目作品が立て続けに公開され、今や最もホットな女優の一人


シャーロット アリソン・ジャネイ

娘とのジェネレーション・ギャップに戸惑いながらも、母の強さは失わないシャーロット。アリソン・ジャネイが『JUNO/ジュノ』(07)のヒロインの義母役でも見せた、独特の大らかな包容力でスキーターの母シャーロットを演じる

出演作品
『アメリカン・ビューティー』でSAG(全米俳優組合)賞の「映画での最も傑出したアンサンブル・キャスト」賞を受賞
『めぐりあう時間たち』でも同賞にノミネート。ハリウッド屈指の名バイプレイヤー。
テレビドラマでは『ザ・ホワイトハウス』のCJ・クレッグ補佐官役で4つのエミー賞を受賞。

ヘルプ ~心がつなぐストーリーネタバレあらすじ

1960年代のアメリカには「分離法」と言う法律があり、黒人と白人の境界線がはっきりと決められていました。

ネタバレあらすじ

「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」の登場人物は白人家庭の女主人達と、理不尽な扱いを受けながらもそこで働くしかない黒人のメイドたち、そしてその実態を明らかにしようとするジャーナリスト志望の女性スキーター。スキーターもまた幼少期を黒人のメイドに育てられた白人でした。

当時の白人の上流家庭では黒人のメイドを雇い、家事や子育てをさせるのが一般的でした。
メインキャストの一人、黒人メイドのエイビリーン・クラーク(ヴァイオラ・デイビス)は17人もの白人の子供を育てあげたメイドのプロ。現在では出産を控え、うつに悩まされるエリザベス・リーフォルトの元で家事と育児を任されていました。

一方、こちらもメインキャスト、料理上手な黒人メイドのミニー・ジャクソン(オクタビア・スペンサー)。彼女はヒリー・ホルブルック(ブライス・ダラス・ハワード)の家で雇われていました。ヒリー・ホルブルックは物語において悪役を一手に引き受けている存在。意地悪で高慢、人種差別の権化と言っても言い過ぎではありません。

でも別の角度から見ると、当時のアメリカにおいては典型的な上流階級の奥様だったのかも。
家事と育児はメイドに任せボランティア活動や慈善活動に励み、いろいろな婦人団体の上層部のごきげん取りもしなくちゃだし、家庭では旦那の言いなりになる事に甘んじている若い奥様。

主役のスキーターはエリザベスやヒリーの友人で独身のライター志望。大学を卒業し故郷ミシシッピ州ジャクソンに戻りました。そこで見た友人たちの黒人メイドに対する態度に違和感、更には嫌悪感さえ感じました。

黒人メイドを使わないと生活が成り立たないくせに黒人を差別する、白人至上主義に疑問を抱き人種差別の実情を告発する暴露本を出版しようとします。

どんな差別をしているのかというと、まず、トイレの使用について。
ヒリーはトイレットペーパーに印を付けて使う量まで管理しようとします。挙句には黒人と同じトイレを使うと病気がうつると信じ込み、屋外に専用のトイレを作るべきだと主張し友人達にもそうする事を強制します。

そのくせ、自分の子供たちの子守は任せっきり。 黒人が子供を触るのは平気だし、黒人が作った料理を食べるのも平気なんです。矛盾していますよね…?

スキーターは本を書くためにメイドたちに取材の依頼をします。
最初にスキーターの熱心な説得に応じて協力してくれたのは友人エリザベスのメイド、エイビリーン・クラーク。エイビリーン自身も書くことに興味があり、日々の祈りや子守の事などを書き貯めていました。

こうして秘密のうちに取材が始まり、スキーターとエイビリーンの間には信頼関係が生まれました。しかし、他のメイドたちはバレて首になる事を恐れて協力を拒みました。

そんな折にヒリーのメイド、ミニーがヒリーの家のトイレを使った事でヒリーの逆鱗に触れ解雇されてしまいました。怒ったミニーは「特製チョコレートパイをヒリーに食べさせる」という恐ろしくも痛快な仕返しをし、更にスキーターの取材に参加することを決めました。しかし、エイビリーンとミリーだけの証言では本にするほどの情報が集まりません。

そんな中、ヒリーが雇ったミリーの後任のメイド、ユール・メイがやはり、ヒリーからひどいいじめを受けた挙句に逮捕されてしまいました。この事に憤慨したメイドたちはスキーターに協力し、自分の経験を語り始めるのでした。

多くの証言が集まってスキーターはついに本を完成させました!!! メイドたちの様々なエピソードが明らかになり、特に「ヒリーが食べた特製チョコレートパイ」のくだりが大うけしました。本の売れ行きは良く、協力してくれたメイドたちにも利益を還元することができました。スキーターの元にニューヨークの出版社から採用通知が届きました。

ヒリーは本に登場する特製パイを食べたのは自分の事だとわかっていますが、それがバレる事が恐ろしくて、騒ぎ立てるわけにはいきません。その仕返しかどうかはわかりませんが、スキーターやミリーと仲の良いエイビリーンをエリザベスのメイドなのに、銀器を盗んだと言いがかりをつけて解雇しさせます。

「こんな事ばかりして疲れませんか?」とエイビリーンに言い返されて、顔をゆがめて泣くのをこらえるヒリーの姿は黒人分離政策の崩壊の兆しのようにも見えました。

17人もの白人の子供を育てあげたメイドのプロ、エイビリーン。
わが子のように可愛がり育てていた18人目となるエリザベスの娘、メイ・モブリーとの別れを最後に子守の仕事を止める決意をするエイビリーン。

スキーターに協力することがきっかけになりましたが、今まで胸に押し込めてきた思いを表に出して
その真実を語る勇気を得る事が出来ました。代々受け継がれてきた「メイドとして白人に仕える」だけが生きる術ではない、と明確に気付く事ができた瞬間でした。

エイビリーンはおそらく作家になる道を選んだのでしょう。



 

 

ヘルプ ~心がつなぐストーリー感想と考察

ここからは、感想と考察をご紹介します。

この物語「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」は「人種差別」をテーマにした映画です。
上記のあらすじだけを読むと、「差別されてきた黒人メイドが一人の白人女性の執筆活動を手伝う事で自分の道を切り開く決意をする物語」という事になります。

作品だけを見ると人種差別主義者のヒリーがやっつけられてスッとした、とか
黒人メイドのエイビリーンが自分の道を切り開く決意をした事がよかった!などの感想もあるかと思いますが、ここでもう少し深く考察してみると、それだけでは終われない感じがしました。

 

ヘルプ ~心がつなぐストーリーの真意は?

一番気になった点は、これは誰が主人公なの?という疑問。
白人ジャーナリスト志望のスキーターなのか?それとも黒人メイドのエイビリーンなのか?

冒頭では「分離法」に背き法律違反を犯しながらも黒人メイドの実情を本にして出版して、黒人メイドたちの英雄になったスキーターが主人公のようでしたが、ラストはメイドのエイビリーンがメイドを辞める決意をして新たな人生をスタートさせる決断をしたところで終わります。

物語の「核」になる部分は何なのか?が明確ではなく、ぶれているように感じました。
公民権運動が白人の目を通して描かれ、そしてなぜ白人女性が貧しい黒人メイド達のヒーローとして描かれているのか? 差別はいけない事と言いながら、その実、堂々と差別をしているのでは?とも取れます。

ヒーロー(スキーター)が登場して悪者ヒリーをやっつける、という単純な構図になってしまったから最後にエイビリーンのシーンを付けたした。という風にも見れます。最後、エイビリーンは作家になる道を選んだみたいになっていますが、あくまでも本を書いたのはスキーターです。その辺りの設定もブレブレな気がします。

首になったミリーがヒリーに「特製チョコレートパイ」を食べさせ復讐するくだりも、確かに可笑しくてせいせいする場面ではありますが、このエピソードは人種差別とは関係ありません。ここが物語においてメインイベントみたいな扱いになって、最後まで取りざたされるのにもどうなんだろう?と感じました。

ここは、ヒリーにはそう思わせておいて実は普通のパイだったのよ、という風にしても同じ効果は得られたのではないかなと思いました。黒人はそう言う事を実際にする、と勘違いさせられる迷惑なエピソードだとすら思いました。

 

ヘルプ ~心がつなぐストーリー考察

「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」は実際に黒人映画ファンの間では批判が出ている、という声がある事を知りました。

アフリカ系アメリカ人の作家で政治評論家メリッサ・ハリス・ペリーによると「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」は黒人女性の人生についた語られた映画ではなく、リアリティーショーだ、と言っています。

ヴァイオラ・デイビスがメイド「エイビリーン」を演じた事については「この2011年にヴァイオラ・デイビスがメイドを演じなくてはいけない事がもっとも許せないわ」と話している。「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」について批判が集まる中、ヴァイオラ・デイビスに関してはみな擁護しており、俳優のウェンデル・ピアースも映画については「辛くて見ていられない。自分のお婆ちゃんの事を思う」と書いているが、ヴァイオラ・デイビスとミリー役のオクタビア・スペンサーについては「驚かされぱなしだった。彼らが映画に貢献したのは芸術的」と語っている

ヴァイオラ・デイビスはアカデミー賞、エミー賞、トニー賞を受賞し、演劇の三冠王を達成した名女優です。そんな彼女が「エイビリーン」を演じた事にメリッサは怒っています。ヴァイオラほどの名優がやる役ではない、ということでしょう。

しかし、オクタビア・スペンサーについても同様ですが、この二人の貢献があってこそ「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」が大きな成功を収める事が出来たのですね。

 

そしてこれは余談ですが、原作者キャスリン・ストケットが「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」のモデルにした人物から訴えられた、というエピソードがありました。

アイビリーン・クラークのモデルとなったとアビリーン・クーパーから許可なしにモデルにされたと訴えられたが、その訴えを裁判所が退けた。
アビリーンは「彼女(ストケット)は嘘つきだわ。彼女は使ったのよ。彼女は知ってるくせに」と怒っている。しかし「本ではアビリーン・クーパーの名前は使っておらず、アイビリーン・クラークを使い、アビリーンは2011年の現在でミドルエイジだが、アイビリーンは1960年代でミドルエイジだった」という事で訴えを退けられた。
ストケットは2009年のインタビューで「書いている時にはみんなが読むなんて思わなかったので、クリエイティブな名前が浮かばかなかった。だから知っている人を使ったの」と話している。

おやおや、なんと言う事。アビリーンとアイビリーン、クーパーとクラーク…。
作家なのにちょっと想像性がなさすぎな気がしますね。「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」にモデルがいるのであればもっと配慮すべきだったでしょう。

この様な情報を知ってしまうと、物語の「核」になる部分がぶれているのでは?と書きましたが、それが裏付けされる材料になってしまいますよね。

「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」は原作者にとっても処女作、そしてテイト・テイラー監督にとっても初の監督作品、という事で初めて同士の組み合わせなので致し方ない、と言えばそれまでです。取り扱うにはあまりにも大きなテーマだったのでは?と思いますが、このテーマにチャレンジした勇気は評価するに値します。

なんだか辛口評価になってしまいましたが、「ヘルプ ~心がつなぐストーリー」はそれだけ興味深い作品でもあるのです。この記事を書くにあたって、いろいろな方のレビューなど拝見しましたがどんな名作でも別の角度から見れば、別の見解があることがわかり、それらを知る事は面白いものです。



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