『パーフェクトケア』(2020年の作品)は法廷後見人制度を悪用して金持ちの老人から財産を巻き上げる若く美しいマーラ(ロザムンド・パイク)が最悪最強の老女に関わってしまったために、窮地に立たされる羽目になり、自業自得な人生を余儀なくされる。という現代社会が生んだクライムサスペンス・コメディです。
この記事では自業自得なマーラの人生をあらすじを追いながら結末にたどり着きたいと思います。また、本作中で抜けた歯を牛乳につけるシーンがありますが、そこにも注目してみます。
パーフェクトケアネタバレあらすじの結末
ネタバレあらすじ 悪徳後見人
マーラ・グレイソン(ロザムンド・パイク)は高齢者の法定後見人を務めています。
法定後見人とは、”認知症などの理由で判断能力が欠けている高齢者に対して、財産管理や身上保護などを支援することが出来る制度”
一般的に後見人は、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職がなるケースが多いですが、本作の場合は判断能力が認知症などにより低下した高齢者の後見人を、家庭裁判所が決める”法律が定めた法定後見人”になります。
「身寄りのない老人をケアする」心優しく美しい女性マーラ、しかしその本性は利他精神に満ちた好人物などではなく、狡猾な詐欺師です。法律を熟知し、法定後見人として高齢者の財産を着服する恐ろしい悪徳後見人。
マーラはパートナーのフラン(エイザ・ゴンザレス)や、カレン・エイモス医師(アリシア・ウィット)また、高齢者向けケア施設の所長サム・ライス(ダミアン・ヤング)らと共謀し高齢者を搾取し、巨額の利益を上げていました。
医者と共謀して認知症という虚偽の診断書を作り裁判所に提出、後見人と言う資格を得ます。そのうえで強制的に高齢者向けケア施設に入所させ、完璧なケア(パーフェクトケア)の代わりに半ば監禁状態にし、財産を骨の髄までしゃぶり尽くすのです。
その搾取の全ては法律に則って行われており、マーラを罰することのできる者はいません。
ある日、フェルドストロム(メイコン・ブレア)という男性が、母親を連れ戻そうとして施設に押しかけます。
しかし、職員に取り押さえられ、裁判でもマーラの巧みな弁論で敗訴し母親を取り戻すことができませんでした。
このフェルドストロムと言う男性を覚えておいてくださいね!
ネタバレあらすじ 新たな標的
マーラとフランは、老人たちが通うクリニックの医師カレン・エイモスから紹介された資産家で身寄りのない高齢女性ジェニファー・ピーターソン(ダイアン・ウィースト)を次なる標的にします。
ジェニファーは健康で認知症もなくいたって健全な老人、ひとり暮らしでしたが何の問題もなく人生を楽しんでいました。
マーラは医師のカレンと組んで、ジェニファーは認知症で一人暮らしは危険だという診断をさせます。そして裁判所命令で施設に入るよう仕向けられたのです。
突然、何もかも取り上げられ施設に連れていかれ、携帯も使えず、外に出ることもできない。何をするにしても後見人のマーラの許可が必要な状況に置かれたジェニファー。
しかし、マーラが標的にしたこの女性、ただの老人ではありませんでした。
ネタバレあらすじ ジェニファーの正体は?
もぬけの殻となったジェニファーの家にアレクシー(ニコラス・ローガン)がやってきます。アレクシーは、毎月ジェニファーを迎えに行くのが仕事。しかし、ジェニファーはおらず、家は売りに出されていました。
一方でマーラはジェニファーの財産を横取りするのに夢中です。貸金庫のカギをみつけて銀行に行くと「後見人」の権利を行使し金庫を開けさせます。中に入っていたのは…。
念入りに隠された大粒のダイヤが!!! マーラはジェニファーが只者ではないと感じ始めていましたが、いまさら後に引く気はありませんでした。
アレクシーはジェニファーが行方不明になった不可解な出来事を、雇い主である裏社会の大物でロシアンマフィアのローマンの(ピーター・ディンクレイジ)に報告します。
なんと!ジェニファーはローマンの母親だったのです。マフィアの母親に手を出してしまったマーラ、これはかなりヤバい事になりそうです。
表に出たくないローマンはマーラの事務所に弁護士のディーン(クリス・メッシーナ)を派遣します。ディーンは現金15万ドルと引き換えにジェニファーの解放を求めますが、マーラの方が1枚も2枚も上手でした。交渉は決裂。
ディーンは裁判を起こしますが、裁判官も饒舌なマーラに取り込まれてしまい、訴えを退けました。
ネタバレあらすじ ジェニファー奪還
裁判でジェニファーを取り戻せなかったローマンは強硬手段に出ます。ジェニファーを救出すべくアレクシーを施設に送り込み力尽くで奪い返そうとしますが、もう少しのところで駆け付けたマーラとフランに阻止されました。
その報復として、ローマンは医師のカレンを手下に殺させたのです。
いよいよマフィアっぽくなってきました!
相手にしているのがかなりヤバいやつ、と命の危険を感じたマーラとフランは身を隠す一方で、ジェニファーにあきらめる様に脅します。
これに逆上したジェニファーはマーラの首を絞めますが取り押さえられてしまいました。裁判でこの時の防犯カメラの映像が証拠として採用され、ジェニファーは心神喪失とみなされて精神病院送りになりました。
これは恐らくマーラの策略ですね。
ジェニファーを脅し、わざと危害を加えるように仕向け、証拠の映像を撮って裁判所に提出。
ジェニファーをローマンの手の届かないところに送り込むための演出でしょう。
このことに怒ったローマンはついにマフィアとしての力を全開にします。フランを襲い、ガス爆発を偽装して殺そうとし、マーラは飲酒運転に偽装されて車ごと湖に沈められました。
ネタバレあらすじ 死んでも死なない
間一髪で水没した車の中から脱出したマーラは、隠れ家に行き、気絶していたフランを救出しました。
逃げて盗んだダイヤモンドを売って再出発するか、それともローマンに怯え続けるか???マーラとフランは復讐することに決めました。
まさかあの車中から脱出するとは!?アクション要素もたっぷりですね!
マーラがドン引きするくらい強すぎる!!!
拉致されたときに控えていた車のナンバーからローマンの車を突き止めて尾行し、ローマンを誘拐します。その後、ローマンに薬物を注入して意識不明にし、身元不明者を偽装して丸裸にし森の小道に捨てました。
翌朝発見されたローマンは病院に運ばれ、目を覚ますとそこにはローマンの後見人となったマーラが!?
1000万ドルと引き換えに解放するというマーラに対し、ローマンは後見人ビジネスを大規模に展開する資金を出す代わりに、共同経営することを提案しました。ローマンはマーラの才能に惚れ込みました。
「あんたは逸材だ、その意志の強さは正直恐ろしい」母親を精神病院送りにした憎い女だが組めば大儲けできると。
ローマンは世界中に80もの企業を展開しており、その全てで後見人制度を、それにかかわるあらゆるジャンルを網羅し、介護の総合ビジネスを創ろうという提案をしました。
壮大な計画に同意したマーラは大成功を収めメディアでも取り上げられ有名になり一躍時代の寵児となりました。
ネタバレあらすじ ラストシーン
成功の秘訣は?の問いに
「すべては努力のたまもの。あとは勇気と決してあきらめないという覚悟さえあれば」
地位も名誉も莫大な財産を生み続けるビジネスも恋人も、すべてを手に入れたマーラ。「大成功した起業家」「桁違いの大金持ち」になったマーラ。しかしその幸せは突然に終わります。
過去に詐欺の犠牲になり母親を奪われたフェルドストロムに拳銃で襲われ、命を落としました。自業自得とはまさにこのこと…。
フェルドストロム冒頭で登場した人物ですね。
おぼいておいてくださいね、と言ったのは
ラストで最登場するからなのでした。
パーフェクトケア 感想と考察
感想と考察 法廷後見人という罠
「美しき女法廷後見人」と言う設定がすでにうさん臭さしかないですね。スタイルがよくて美しくて溌溂としたバリキャリウーマンのマーラが手掛けるビジネスは、老人の法廷後見人になって財産を根こそぎ搾取する詐欺師です。
法の網をくぐり抜け、すべてを目くらまし的に合法化して突っ込みどころがないくらい完璧に搾取する。こんな女に狙われたら、老人は何もかも差し出すしかないのです。
冒頭、マーラのやり方を見ていると、今は若くて美しい自信に満ちたキャリアですが、歳を取ったら今度は自分が搾取される側になるだろうに、と哀れみさえ感じてみていたのですが、ストーリーはそんな展開とは全く違っていました。
『パーフェクトケア』を視聴した人の中には老人介護に従事している人もいると思います。そんな人だけに限らず、高齢で一人暮らしをしている親を持つ人ならば、この映画は見ていて気分が悪く絶対に共感できるものではないでしょう。
感想と考察 方向性の変化
しかし、映画の方向性は変わってきます。マーラがターゲットにしたダイアン・ウィースト演じるジェニファー・ピーターソンはなんとロシアンマフィアのボスの母親だったのです。息子はピーター・ディンクレイジ演じるローマン・ルニョフです。
ピーター・ディンクレイジは、かの大人気ドラマ『ゲームオブスローンズ』で最も重要な役柄の一人ティリオン・ラニスター役を演じました。
ローマンは何としてでも母親を取り戻そうとあの手この手でマーラに挑みますが、マーラの方が上手でした。ピーター・ディンクレイジの大ファンの私としてはもっと頑張って欲しかったのですが、主役はマーラですので…。
感想と考察 真のテーマは?
マーラの信念は”ケタ違いの大金持ちになる”ことです。
見ための美しさとは対照的にハイエナのような狡猾さで獲物に食らいつく姿、決してあきらめない執拗さ。甘い言葉に流されることなく、ただあくなき欲望を満たす。
これほどまでの執着は何だったのでしょう?なぜ、ケタ違いの大金持ちになりたかったのか、大金持ちになって何をしたいのか?その理由は具体的に描かれていません。
理由を描かないことで「余計な感情に振り回されることなく目的を果たす」この一点だけにフォーカスしています。それがこの作品の描きたかったことなのではと推察しました。
感想と考察 結末
マーラはローマンの提案を受け入れて介護の総合ビジネスを共同で運営し、ケタ違いの大金持ちになりました。恋人のフランと結婚し、幸せの絶頂!という時にフェルドストロムに撃ち殺されました。
これの意味するところは、マーラの幸せは周囲の人々の不幸の上に成り立っており、世間でよく言われるところの「自業自得」を体現したことになりました。
信念を持って生きることは大切な事であると同時に、信念を通しすぎると周囲とのバランスが崩れていずれは身の破滅を引き起こしかねない事態になる、ということなのでしょう。
最後に―――
この映画は高齢者が法廷後見人制度によって自由も財産も奪われる、というひどい筋書きですが、若干のユーモアも盛り込まれています。
それは敵対するロシアンマフィアの存在がちょっとだけダサい、ということです。
大して有能でもない弁護士やジェニファーを奪い返すために施設に押し入ったアレクシーの手際の悪さ、マーラもフランも殺し損ねたことなどなど。。。「ダッさっ」と思って観れるところも魅力の一つと言えます。
パーフェクトケア 抜けた歯は牛乳に!
この映画にはユーモアも盛り込まれている、と書きましたが、実は1番気になっている不思議なシーンはマーラがローマンに車ごと湖に落とされ、そこから死に物狂いで抜け出して岸に上がったとき、落ちた衝撃で奥歯がぐらついていたのでしょう、その歯を引き抜いてポケットに保管します、
ガソリンスタンドまでたどり着き牛乳を手に入れそこでパックのふたを開けて、抜けた歯を入れました。その後は医者を訪ねて抜けた歯を入れてもらうのですがなぜ牛乳に浸すのか、すごく気になったので調べてみました。
外傷で抜けた歯を再び元の位置に戻すためには、抜けた歯の根っこの周辺にある「歯根膜(しこんまく)」という細胞が生きていることが必要です。 この歯根膜は乾燥すると死んでしまうため、生理食塩水の成分に似た牛乳に漬けて、細胞が死んでしまうことを防ぎます。
このことを知っている人が一体どれだけいるでしょうか?この演出は不要だったかもしれません。ですが、インパクトは強く、調べないわけにはいきませんでした。
パーフェクトケア ネタバレあらすじ結末 感想と考察 抜けた歯は牛乳に!のまとめ
『パーフェクトケア』の主人公マーラ役のロザムンド・パイクは「強い女」「悪女」を演じたら腹が立つほど抜群です!今回は高齢者の法廷後見人制度を悪用して財産を奪い取る、と言う詐欺師を演じました。
狙った高齢者がマフィアのボスの母親だったことから、とんでもない展開になりますが、一貫して目的を達成しようとする恐ろしいまでの執着を見せられて、逆に妙に共感する部分もありました。ぜひ記事を読んで頂いて、ご視聴の参考にしてください。
〈Pinoko編集局〉
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