トムハンクス主演『オットーという男』の原作はスウェーデン発の世界的ベストセラー小説「幸せなひとりぼっち」で、同じタイトルで映画化されたものをハリウッドリメイクした映画です。映画に登場する存在感たっぷりの猫ちゃんが猫好きさんたちにはたまらない映画とも言えます。
この記事では『オットーという男』が実話なのか、また原作との違いフォーカスしてあらすじと感想、見れる配信サイトをご紹介します。
オットーという男は実話?
『オットーという男』が実話に基づいた作品なのか?について調べてみたら実話ではないことがわかりましたが、オットーのような人物は実際にはいます!妻に先立たれ生きがいをなくした男…。
思えば実際にご近所にもそんな老夫婦が居られましたね、とても仲が良かったご夫婦でしたが奥様が突然病気で死亡、その翌年ご主人も後を追うようにして亡くなられました。
これが逆だと違うようで、こんな人もいました。
長年町長をなさっていたご主人が病気で亡くなられ、残された奥様はさぞかしお気を落とされたのでしょうが、しばらくするとやれ海外旅行だ、観劇だとものすごく生き生きと未亡人ライフを楽しんでおられるようでした。町長夫人であることのストレスから解放された、と言ったところでしょうか。
横道にそれましたが、前者のような男性は少なくないと思います。妻に先立たれて生きがいをなくした男。同居する子供もなく、全くの独りきり…。
町内の役員でもありルールと秩序を守る事に全てを賭ける口うるさい嫌われ者、そんなありがちな人物像なので、モデルはそこら中にいたでしょう。なので実際の人物から影響を受けた人物像であっても全く違和感がありません。
そんな男にも「ルーベン」のような理解者の一人や二人はいるでしょう。実際にこのような人物がいたかは不明ですが人間誰しも全くの孤独、ということは考えにくいもので、親密ではないにせよ関わりを持っている人は居そうですよね。その人は歳をとって認知症になるかもしれません。
このように、どこにでもいそうな人物に太線で輪郭を付けたような男が「オットー」なのではないでしょうか?
オットーという男 原作との違い
ハリウッドリメイクされた映画『オットーという男』の元になったのは、2016年に公開されたスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』で原作はフレドリック・バックマンの小説『オーヴェという男』です。
原作のタイトルを採用して「オーヴェ」を「オットー」にしたのですね♪
トム・ハンクスが演じるオットーはハリウッドらしく本家の主人公よりも少しおちゃらけたところもあります。スマホやSNSなどの今のツールを使っていて現代に寄せてあります。
それに比べてオリジナル版はより文学的な印象で重みもありました。
妻の名前は同じソーニャだった。落とした本も同じで、ミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』である。ソ連時代に執筆されたが出版を禁止され、1970年代になってようやく日の目を見た小説だ。スターリン体制を批判し、今となってはプーチンを予言していたとも解釈できる。ソーニャという名は、『罪と罰』のヒロインと同じである。
オリジナルとほぼ変わらない演出になっていますが、相違点としてはオリジナルでは主人公がサーブ派で友人はボルボ派であったことで仲たがいしています。ヨーロッパならではですね。本作ではオットーはシボレー、友人はフォードです。
オットーという男と猫
『オットーという男』で重要な役割を果たしたのはシュメーグルくん(推定7才)です。天才的な演技力の持ち主といってもいいでしょう。
一般的には数匹の猫を使ってCBも交えながら撮影するのですが、本作ではシュメーグルくんだけで撮影が行われました。全体の90%を演じ、残りの10%はCGを使ったそうです。
シュメーグルくんの立ち居振る舞いは野良猫といえどもとても存在感があって優雅でした。特に寝室のベッドに上がって横たわっている姿などは、すっかりその家の飼い猫然としていました。
ラストシーンでのオットーのそばで最後を見届けて、まるで先に亡くなった妻のソーニャなのかも?と思えました。
オットーという男と猫 ネタバレあらすじ
ネタバレあらすじ 死にたい男
その男が買ったロープはなんと!自身の首吊り用だったのです。それが分かったのは、少し後のこと。
その男、オットーは毎朝5時半に起床、朝のルーティンである自分が住むコンドミニアムを見回ります。違法駐車はないか?ごみは落ちていないか?
曲がったことが許せないオットーは常に眉間にしわを寄せルールを守らない住人にお説教ばかりしていて、町内イチの嫌われ者です。
その日オットーは勤めていた工場を退職しました。最愛の妻ソーニャ(レイチェル・ケラー)に先立たれ、仕事も辞めて生きがいをなくしていました。
自宅の電話や電気を止めたり解約する手続きをし、床に新聞を敷いて買ってきたロープを天井に吊り下げてまさに首を入れて死のうとしたとき、向かいの家に新しい住民が引っ越してきました。
あまりにも運転が下手すぎてもたもたしている様子に黙っていられなくなり、ロープから首を抜いて文句を言いに行きます。
このことが最愛の妻に先立たれ、仕事もなくし孤独を抱え自らの人生にピリオドを打とうとするオットーの人生を変えるきっかけになったのです。
それから後も、何度か自殺を試みます。中断した首吊りを再開し、それは成功したかのように見えましたが思い出の数々が一瞬走馬灯のようによぎった瞬間、ロープを吊った天井の金具が外れてあえなく失敗。

若いころのオットーを演じたのはトム・ハンクスの息子トルーマン・ハンクスでした。トムには俳優の2人の息子コリンとチェットがいましたが2人はトムに似ていませんでした。
俳優ではなかったもう1人の息子トルーマンが若いころのトムによく似ていたためこの役を演じることになり、俳優デビューしたのです。
ネタバレあらすじ 越してきた隣人
図らずもオットーの自殺を阻止することになった向かいの家に越してきた家族は、ちょっとどんくさい夫のトミー(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)、3人目を妊娠中のマリソル(マリアナ・トレビーニョ)と2人の子供たち。
無遠慮にオットーの生活に踏み込んでくる人懐っこくてお節介なマリソルはオットーとは真逆な性格で、小さい娘たちの子守や苦手な運転をオットーに平気で頼んできます。
この迷惑な隣人一家がオットーに与えた影響は大きく 、人生をあきらめようとしていたオットーは段々と変わっていくのでした。
近所に住む黒人の老夫婦、夫のルーベン(ピーター・ローソン・ジョーンズ)は認知症を患っていて車椅子生活です。妻のアニータ(ジァニタ・ジェニングス)が介護をしていますが、息子ルイスは家を手放して施設に入れようとしています。
お節介なマリソルにヒーターが壊れているので修理に行ってあげて、と頼まれしぶしぶ修理に行くオットー。そこでオットーはルーベン相手に独り語りを始めます。「苦労して築いたものがぶち壊されていくのを耐えられない、先に逝くぞ」と自殺することをほのめかしました。
修理が終わり、帰ろうとするオットーの荷物を引っ張って離そうとしないルーベン。「離せ!」と手を叩いて出ていくオットーですが、「先に逝くぞ」といったことへの反応だとわかって慌てました。
ネタバレあらすじ ドライビング‥ミセスマリソル
マリソルに運転を教えることになったオットーはマリソルの恐ろしい運転でやっとパン屋までたどり着き、そこでお茶することにしました。そのパン屋は亡くなったソーニャと日課のように通っていた場所でした。

マリソルが信号で止まるとき、ぶつかりそうになった車は「トヨタ・プリウス」でしたね。
日本車をディスっているのでしょう(笑)
マリソルに運転を教えることでオットーも緊張していたのでしょうね、パンを食べながらホッとしたのかいろいろな昔話をマリソルに話して聞かせました。
その中の一つにルーベンとの若かりし日の思い出話もありました。2人には車にこだわりがあってルーベンが”フォード”を買えばオットーは”シボレー”、買い換えたとしてもルーベンは”フォード”派でオットーは”シボレー”派でした。
ところがある時、ルーベンが新しく買った車はトヨタの”セリカGTコンバーチブル” あれほど何年も”フォード”に忠誠を誓っていたのに、それを破ったルーベンをオットーは許さなかったのです。

オットーがヒーターの修理に行ったときに「まだお前を許していない」とルーベンに言ったのはこのことだったのですね。
その夜オットーはマリソルに無理やり頼まれて子守をすることになりました。初めのころのオットーなら引き受けたりはしなかったでしょうが、少しずつ頑なだった心がほぐれてきているみたいです。
子供たちに本を読んだり、人形遊びをしたり、挙句には壊れて放置されていた食洗器まで修理する始末。
ソーニャが亡くなってから以降、閉ざしていた心の扉をマリソルが無理やりにこじ開けてお構いなしに入り込んできたことはオットーにとっては良かったのかもしれません。段々と人間らしい優しさと温かみを取り戻していきましたから。
ネタバレあらすじ 猫と同居
最初の出会いは雪の日の朝でした。いつものように見回りをして家に帰ると家の前に野良猫がいました。
次に出会ったのはオットーのガレージ、扉を開けると車の下にまたその野良猫が!追い出そうと足で追い払いますが、野良猫はオットーのズボンの裾に爪をかけて引きずられても出ていこうとはしませんでした。

この時の猫ちゃんの演技(?)素晴らしかったですね!オットーのズボンの裾に両手をひっかけている姿は自然そのもの(自然で当たり前なのですが💦)でナイスタイミングでした!
別の日の朝、雪に埋もれて倒れている野良猫をマリソルが発見しました。雪かきをしていたオットーを呼びに行きますがオットーには助ける気がありません。
そこに隣人のジミー(キャメロン・ブリットン)が通りかかり、猫を抱きかかえてオットーの家に連れて行きました。そこで温めると猫は生きていましたが、オットーには飼う気がありません、なぜならこれから死のうとしているから。
仕方なく、ジミーが引き取ることになったのですがジミーはひどい猫アレルギー、結局オットーの家で飼うことになりました。
ネタバレあらすじ 見回りの後継者
自殺をあきらめないオットーは今度はライフル自殺を図ります。準備する中でソーニャとの思い出に沈んでいきます。そこに突然のノックの音が!その音に驚いたはずみでライフルの引き金を引いてしまいました。みごと天井に命中‼
ノックしたのは自転車を直してやったマルコム(マック・ベイダ)でした。父親に追い出されてしまって、今夜泊めてもらえないだろうか?と言ってきたのです。ことごとく、隣人に自殺を阻止されるオットー…。
翌朝の見回りにはなぜかマルコムもついていくことに。歩きながらチェックポイントをマルコムに教えるオットーは、後継者ができたような気分だったのか嬉しそうでした。
そこに、ジミーも通りがかって合流し3人で通りを見回って最後にはゲートのロックを確認しました。
ネタバレあらすじ 結末
長い付き合いの隣人ルーベンとアニータの夫婦の家が悪徳不動産に狙われていることを知ったオットーは、周りのみんなの協力を得て見事に撃退しました。
ジミーは遠くにいる息子のルイスに代わって2人の面倒を見るといい、SNSジャーナリストは不動産業者が不正に高齢者の医療情報を手に入れてることを生配信で指摘しました。
みんなの協力を得てルーベンとアニータを守れたオットーですが、病状が悪化して倒れ救急搬送されました。
一命をとりとめ、意識が回復したオットーの目に入ったのはマリソルの笑顔。医師から病状を聞くマリソルはなんとそこで産気づいてしまいそのまま分娩室へ!寝ているどころではなくなったオットー。
マリソルは無事に男の子を出産しました。オットーは自分の子供のために用意しておいたベビーベッドをマリソルの赤ちゃんにプレゼントしました。
医者からは長く持たないといわれたオットーは自分の死に向かって準備を始めました。マリソルに言われたようにソーニャとの思い出の品を整理しました。
マルコムには愛車のシボレーを譲りました。そして新しくシボレーのトラックを購入しマリソルたちをドライブに誘います。
数年がたったある雪の朝、マリソルとトミーはオットーが玄関先の雪かきをしていないことに気が付き慌てて家に向かいました。
二階の寝室のベッドで息絶えていたオットーを見つけ、そのそばで猫が見守っていました。遺言状には猫と家と車を譲ると、そして、車は絶対にトミーには運転させるなと書いてありました。
オットーという男と猫 感想
まず、猫は鉄板でした!
オットーと隣人をつなぐ役割を担っていましたしベッドではソーニャが居た側にすんっと座ってる。最期を看取ったとも猫でした。
トム・ハンクスのこういった作品は間違いなく感動できます。人間味にあふれた役どころがこれほど似合う俳優さんはいません。
何度も自殺を試みるも、ことごとく失敗するか隣人に阻止されてしまいます。これほど死に損なう人もなかなかいないかもしれません。
死のうと思ってホームに立つも、横にいた老人のほうが一足先に線路に落ちてしまって助ける羽目に!こうなると、コメディ?と思ってしまうほどでしたね。最終的には見回り役の後継者まで出てきてきます。
マリソルを演じたマリアナ・トレビーニョさんも好演でした!ただのお節介な隣人ではなくて真のお節介焼きでした。お節介を焼くには相手を丸ごと受け入れる覚悟がないと焼いてはいけないと思っているのですが、マリソルは本物のお節介焼きでした。
こんな人、昔は居たような気がしますが、人間関係が希薄になったこの頃ではちょっとウザいって言われるタイプの人です。
でもそこまで真剣に関わろうとする姿は現代の私たちに訴えるものを感じました。もっと人と関わろうと。
友人のルーベンと仲たがいした理由が車だったとは!? 男ってホントにね~と思えるエピソードでした。で、日本車がちょいちょいディスられているのも面白かったですね。フォード一筋だったルーベンがトヨタの”セリカGTコンバーチブル” を買うというくだり。
あと、マリソルが運転練習中に追突しそうになった車がトヨタ・プリウスという。どちらかというと、追突されるよりする方の動画をよく見かけますが…。
オリジナルを見たことある人は見るまでもないかもしれないけど、見てないなら見ることをお勧めします。どちらが良いとか劣るということはありません。同じ展開で進みますが、見比べてみるのも面白いです。
気になった点は向かいに引っ越してきたメキシコ系のマリソルと夫を最初は無下に扱うのだけどマリソルが学位を持っている事を見つけるシーン。あれは何のためのシーンだったかよくわかりませんが人種に対する偏見を表現していたのでしょうか?
そのあとのオットーの態度が変わったようにも見えました。食洗器を修理したのはそのあと?マリソルの職業には特に触れていませんでしたがもしかしたら妊娠で休職中の研究者か教授とか?
とにかく、オットーが隣人と少しずつ心を通わせていく過程を一緒に見守りながら人との関わりって素敵だなとしみじみ感じた映画でした。
トム・ハンクス、77歳!いい歳の取り方をしてこられてこれからますます楽しみです。
オットーという男と猫 原作との違い ネタバレあらすじと感想と見る方法のまとめ
トム・ハンクス主演の『オットーという男』をご紹介しました。独りぼっちだと思い、周りを遠ざけていた老人が心を開いていく様子が描かれています。登場する存在感たっぷりの猫にフォーカスし、オリジナル映画『幸せなひとりぼっち』との比較やネタバレあらすじと感想を書きました。
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