THE DAYS脚本と原作 評価は?キャスト相関図と あらすじ

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netflixオリジナルドラマ”THE DAYS”は2011年に起きた福島第一原発事故をテーマにした重層的社会派ドラマです。政府・会社組織・福島第一原発の現場の3つの視点から放射能漏れという、あってはならない事態にどう対処していったのかが実話に基づいて描かれています。観てみたいけど、怖いと躊躇している方、まずはこのドラマが作られた理由とあらすじを読んでみてください。

この記事でわかる事
THE DAYS netflixの脚本と原作
THE DAYS netflixの評価は?
THE DAYS netflixキャスト相関図
THE DAYS netflixあらすじ

THE DAYS netflixの脚本と原作

福島第一原発事故をテーマにしたドラマTHE DAYSがNetflixで配信されると知り、一番に思ったのは、誰がどんな意図があってこのドラマを制作したのか?どんな志を持ってこんな恐ろしくてつらい出来事を掘り起こしてまで、何を伝えたいのか?ということでした。

THE DAYS netflix脚本と原作

ドラマを企画、脚本を書いたのは増本淳(ますもとじゅん)氏。元フジテレビのプロデューサーです。

増本淳 ますもとじゅん
生年月日 1976年  千葉県出身
経歴 2000年 フジテレビ入社
初プロデュース作品 2002年「オカンは宇宙を支配する」
2007年 「はだしのゲン」初のテレビドラマ化
2004年  白い巨塔
2006年 「Dr.コトー診療所2006」
2008年  コード・ブルー -ドクターヘリ救急救命-
2018年 『劇場版コード・ブルー』の製作により藤本賞奨励賞を受賞
2019年  フジテレビ退社

増本プロデューサーは東日本大震災のときにボランティアに行ったことがきっかけで「福島第一原発事故」を描きたいと言う想いを持ち始めたと言います。

しかし、民放の社員でいる限りは特定の企業に密接する内容は企画として通りにくく扱えない、という理由もあってフジテレビを退職しフリーのプロデューサーとして活動する道を選ばれました。

被災地以外の場所で暮らす人々にとっては「コンビニからものがなくなった」「ガソリンが買えない」などの不便さはニュースなどで知る事ができますが、生死にかかわる恐怖は感じません。

しかし、それが放射能となると話は違います。被災地以外の被爆圏内の人々にとっても大きな恐怖です。福島第一原発事故においては東京からの非難を考えた人も多かったと聞きました。

「電気が使えなくなる」「放射能に汚染されるかも」は、もはや対岸の火事ではなく、原子力発電所がある自治体、周辺地域、全員が当事者になります。

原発事故を振り返る事で、被災地に住んでいない人にも当事者意識を持ってもらい、震災の影響で起こりうる事態への共通理解を深めるきっかけにしてほしい。そう言った思いがこのドラマにつながったと言います。

製作する上での絶対条件として原発所員の方の協力です。見た事もないものを描くには実際に体験した方の助言が必要であることは間違いありません。ただ、所員の方々には振り返りたくないと言う思いはもちろんあったでしょう。

しかし撮影に協力してくださったのは、増本プロデューサーの「伝えたい」「他人事ではないとわかって欲しい」という気持ちに共感があったからなのでしょう。

 

THE DAYS netflixの原作は?

原作は作家・ジャーナリスト門田隆将(かどたりゅうしょう)氏が福島第一原子力発電所の所長だった吉田所長にインタビューをし真実に基づいて書かれた本「死の淵を見た男—吉田昌郎と福島第一原発」です。

【死の淵を見た男—吉田昌郎と福島第一原発】
原子炉が最大の危機を迎えたあの時、私は自分と一緒に“死んでくれる”人間の顔を思い浮かべていました。

食道癌の手術を受け、その後、脳内出血で倒れることになる吉田昌郎・福島第一原発所長(当時)は、事故から1年4か月を経て、ついに沈黙を破った。覚悟の証言をおこなった吉田前所長に続いて、現場の運転員たちは堰を切ったように真実を語り始めた。

それに加えて、政府の報告書などを基に制作されたドキュメンタリードラマです。

監督は「コード・ブルー」シリーズの西浦正記監督と「リング」「スマホを落としただけなのに」の中田秀夫監督。

THE DAYS netflixの評価は?

冒頭でも書きましたが、私は「THE DAYS」の予告動画を見た時なぜ「福島第一原発事故」を取り上げたのか疑問に思いました。増本氏にとっても原発を描くことで批判を受けるリスクがある訳です。

CGのクオリティが悪いとか、臨場感がないとかそんな感想も見かけました。建屋内に侵入した時の緑がかった色のトーンがそぐわないとか、淡々としていて盛り上がりがない、などもありました。ですが、正直そこはどうでもよいと思いました。これ以上の何が見たいのか?

Twitterに投稿されていた評価をいくつか紹介します。

震えるような凄い作品だった。大袈裟なBGMもなく、作り手側の主張も抑えられているから、誰かに極端に感情移入することもなく事実が淡々と進み、重くて辛い。原発を持つ国で生きている人たちは見るべき作品。

原発を持つ国に住んでいる私たちはせめて、どこに原発があるのかは知っておくほうがいいと思いました。

正直、こんなにたくさんあるとは知りませんでした。増本氏は原発の是非を問いたいのではなく、「いつの間にかできていた」が問題なのだと言っています。日本はいつのまにか原発大推進の国になっています。メディアはあえてなのか、そこに触れないようにしているのかなとも思えます。

3.11福島原発事故当時、現場対応がこんなに手探りで手作業だったこと、文字通り命を賭けて守った人がこんなにいたことを知らなかった。

災害時のリーダー像として、官邸や本店の対応に嫌悪感を抱く場面もあるが、それは物語としてであって、現実的にそれぞれの立場を考えれば批判も難しい。

などがありました。

2023年6月1日に配信された本作は海外でも注目を集めており、Netflix世界5位、また37の国と地域でトップ10入りを果たすなど、話題作となっています。

THE DAYS netflix キャスト相関図

主な登場人物の相関関係はこちらをチェックしてください。(クリックで拡大)

 

福島第一原発所長の吉田昌郎(実在の人物)を役所広司さん、5号機副長で所長の右腕的な存在の木下を音尾琢真さんが演じられました。この二人は最初から最後まで、事実だけを受け入れ、次々と起こる恐ろしい現象に臆することなく対処していました。

所長は一度だけ、上司の無茶苦茶な命令に声を荒げ、部下の死を悼んで泣いた。。。この時でさえ、木下は所長を見守り支えていました。この二人の演技は終始胸を打ち、毎回こみ上げてくるものがありました。

この作品に携わられた方々全員が本当に難しい役を演じられ、信念や焦燥感、責任の重さを体現し迫真の演技を見せてくれました。

 

THE DAYS netflix ネタバレあらすじ

1話 福島第一原発は水没しました

あらすじ―――

2011年3月11日14時46分 三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近で、深さ約24kmを震源とするマグニチュード9.0の地震が発生しました。

福島第一原発所でも大規模な揺れに見舞われ、中央制御室では1号機2号機の当直長・前島(竹野内豊)の指示の元、原子炉を緊急停止させました。揺れが収まった後、原子炉の状態把握のため運転員の高比良(岡本智礼)と桐原(鈴鹿央士)らを確認に向かわせるなどし、事態の収拾にかかりました。

所長・吉田(役所広司)は被害状況を確認しつつ木下(音尾琢真)らと対策本部を設立し各所の作業員たち全員を免震重要棟へ避難するよう指示を出します。

一瞬の静寂…その刹那、襲いかかる津波
巨大な波の壁となって全てを飲みながら内陸へ向かう、まるで生き物のようでした。福島第一原発の電源設備は津波にのまれて水没し、すべてのシステムがダウンしてしまったのです。


所長の吉田は東央電力本部への伺いを飛ばしていきなり官邸に「15条通報」を出しました。東電副社長・村上(三石研)はその事が気に入りませんが、吉田から詳しい状況を聞き言葉を失います。

15条報告事案とは―――

第十五条 原子力規制委員会は、次のいずれかに該当する場合において、原子力緊急事態が発生したと認めるときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その状況に関する必要な情報の報告を行うとともに、次項の規定による公示及び第三項の規定による指示の案を提出しなければならない。

 

感想――

抗えない自然災害に見舞われた時どうやって立ち向かうべきなのか、に答えがあるのだろうか?そんな部分に想いを巡らせながら感想をのべさせて頂きます。

一つだけ思ったのは「原子力」というモンスターを飼いならす為には何があっても対処できる、制御できる知識と対応策を準備しておくべきなのです。

想定外と言うことはあってはならない。チェルノブイリで、東海村JCO臨界事故で何が起こったのか、忘れてはいけなかったのに。

対策本部で事故対応マニアルを調べているシーンを見て、政府や電力会社は本当に原子力について熟知しているのだろうか?と思いました。

原子力が生み出す莫大なエネルギーからは多くの恩恵を得る事ができますが、一旦暴走を始めると破滅に向かいます。

私自身、中国電力が建設計画中の上関に近いところに住んでおります。もし上関原子力発電所ができて、このような事故があった時は被爆圏内の場所です。山口県でも小規模ながら地震は頻発しています。これらの事を考えながら観進めていこうと思います。

2話 避難の必要はありません

あらすじ―――

官邸の危機管理センター対策本部では東総理(小日向文世)は欲しい情報が何一つ得られない事に苛立ちを隠せません。

現場では電源が落ちたことで原子炉がモニターできない状態になっています。原子炉を水で冷却する必要がありますが、冷却装置が動いているのかどうかもわからない状況。

中央制御室の当直長・前島(竹野内豊)は建屋内に侵入し注水バルブを手動で開口し、注水ラインを確保する方法を提案します。放射能の数値が計測系のマックスを越えていますが、防護服に身を包みバルブを開けるために建屋内に侵入しバルブを順に開けていくのでした。

中央制御室では、車のバッテリーを利用して電源を確保、モニターの回復に成功しますが原子炉内の水位がほぼ0に近い事がわかり驚愕します。それは冷却装置が動いていないという事です。

感想――

原子力安全委員会の委員長・峰岸役の酒向芳さんの演技が上手すぎて腹立たしい。何も知らないし逃げるし。でも本当にこのようなトップは実在すると思います。

現場と官邸の間にホットライン必要ですね。原子力発電所はもちろん、全国の自治体と何があっても連絡が取りあえるツール。それこそ、ドローンで情報共有できるような!? もしかして今はあるのかもしれないですね。

本作では情報共有が遅すぎて見ていてイライラ、東総理の心境がよくわかります。まだガラケーの時代でしたね。12年前と比べると今はかなり進化していますので、災害時でも重要機関の間での通信手段は確立されてるでしょうね。

 

3話 放出する放射性物質は少量です

あらすじ―――

やっと使える配電盤を見つけても瓦礫の山に遮られ、電源車がたどり着けず冷却装置を稼働させることができません。余震が続く中作業員たちはケーブルを引く作戦を取りますが、多くの危険が伴うため中止せざるを得なくなりました。

原子炉格納容器の圧力は上がり続け「メルトダウン」が始まりかけています。報告を受けた吉田所長は圧力を下げるため、建屋内に入り手動で弁を開いて格納容器内の圧力を下げる『ベント作戦』決行を決めました。

吉田から「ベント」実施の命令を受けた中央制御室の前島は作業員を集めこういいました。「放射線量の高い原子炉建屋内に入って作業するメンバーを選びたいと思う」行けば少なからず被爆します。

行かなければどうなるか作業員たちは知っています。葛藤しながらも古参のベテラン作業員古谷(小林薫)や大杉(六平直政)らが名乗りをあげました。

緊迫した中、官邸では詳しい情報が得られない事に苛立ちを感じた東総理は現地に行くと言い出しました。

 

感想―――

東電と原子力保安委員会の上層部はお互いに説明責任を押し付け合い、何の知識も情報もないままトップにいると言うことが露見しました。

現場にいる人間と、遠く離れて安全な場所にいる人間、安全な場所に居ればいいのにわざわざやってくる人間。誰を一番サポートするべき??? 子供でも分かるような事ですが、権力者はわからないんですね。

この時代に、放射能で汚染された空間に人間を行かせなければならないというアナログな対処法しかない、と言うことが全く信じられませんでした。1999年に起こった東海村の臨界事故を思い出します。

東海村JCO臨界事故―――作業員が硝酸ウラニル溶液をバケツで沈殿槽に流し込む作業をしていたところ、7杯目を流し込んだところで沈殿槽が臨界に達しいわゆるむき出し状態の「原子炉」が出来上がってしまったのです。

株式会社JCOは燃料加工の工程で「溶解塔」という装置を使うと定められていたにもかかわらず「裏マニュアル」なるものを作ってステンレス製のバケツを用いるという手順にしていたのです。

この事故では至近距離で多量の中性子線を浴びた作業員3名中、2名が死亡、1名が重症となったほか、667名の被曝者を出しました。

このような恐ろしい事故が起こったにもかかわらず、教訓になっていないと感じました。

 

4話 福島を見捨てることになる

あらすじ―――

中央制御室では『ベント』作戦が開始されました。1班はベテラン作業員、古谷(小林薫)と大杉(六平直政)が突入、無事に弁を開いて戻ってきます。

次に2班の熊谷(山中崇)と霜田が入ります。二人は建屋内に向かいましたが放射線量が高すぎて近寄る事ができず、それでも進もうとする熊谷を霜田は引きずるようにして連れ帰ります。

3班の木下(音尾琢真)と館野です。二人が侵入した直後、対策本部の吉田の元に状況に変化があったことが伝えられます。吉田はすぐさま前島に連絡を入れ、二人を引き戻すよう指示しました。

感想―――

本作中に1999年の東海村JCO臨界事故の描写が出てきました。この部分は増本淳プロデューサーが実際に被害に遭われた方のご家族に連絡を取り了解を得たうえで作られたシーンです。

数シーベルトという単位で放射線を浴びるとこうなるという例として使われ、放射線という目に見えない物質の恐怖を表現するために不可欠な場面を、当時の報告書を作った原子力安全委員会の職員の回想シーンとして描かれました。

このシーンで放射線の恐怖を可視化できて、見る人に具体的にどんな影響を及ぼすのかが伝わりました。

 

5話 うちの会社は狂ってる

あらすじ―――

排気筒から白い煙が出ている事が確認され引き返しました。白煙の原因は原子炉から出た水蒸気であると判断され、同時に格納容器の圧力が下がってきたことが報告されます。それはベントが成功した証でした。安堵する一同。

一方で、冷却水の確保が難しくなり所長の吉田は自衛隊の速水(高橋和也)に海水の水を原子炉に注入する作戦を依頼しました。そんな矢先に2号機原子炉建屋で水素爆発が起こりました。

原子炉の外で作業していた東電の作業員、自衛隊員を含めた多くの人間が被災・被爆しました。激しく噴煙を巻きあげながら発電所の上空を流れていく様子は、実際のニュース映像が使われたのでしょうか?

所長の吉田は上層部からの「原子炉冷却に海水を注入する事は許可しない」と命令されたにもかかわらず、海水注入を勝手に始めました。

感想―――

現場と上層部との温度差が激しかったですね。

吉田所長はじめ現場で命を張ってやっている人達と、安全な場所にいて指示を出す上の人間たちとの温度差が痛いほど伝わってきました。木下がこう言いました。「誰が正しいか、俺たちはちゃんと見ています。だからみんな命を賭けれるんです」

感想で何度も言っていますが、原子力発電において「前例もマニュアルもない」と言うことがあっていいのでしょうか?ベントも海水注入も想定されてしかるべき。

ありとあらゆるケースを想定しクリアできて「何があっても大丈夫」という確信があって初めて取り入れるべきではないでしょうか?

第6話 俺は生きて帰るわけにはいかなくなった

あらすじ―――

2号機に海水注入を始めたのですが、格納容器の圧力が高すぎて海水が入って行っていないことがわかりました。格納容器の圧力を下げ海水注入するために、建屋内に入り弁を開ける必要があります。

中央制御室のベテラン運転員古谷(小林薫)と大杉(六平)が弁を開けるために建屋内に入りますが、分厚い靴底のゴムが溶けるほどの圧力と熱で引き返すしかありませんでした。

このまま海水が入らない状態が続くと、燃料棒が露出しはじめ溶けだした燃料で圧力容器が破損し核燃料が外に流れ出します。つまり、放射能汚染が始まり発電所所員は全員が被ばく、2号機に続き全機がメルトダウンしていきます。

車のバッテリーをつなげて弁を開閉させる電源を回復させ、弁を開く作戦を成功させました。海水注入が始まり圧力が下がりはじめた矢先に、今度は3号機で水素爆発が起こります。建屋周辺で作業していた所員、作業員、自衛隊員が爆発に巻き込まれました。この時、行方不明者40名。

一旦、回復した2号機でも爆発の衝撃で開いた弁が閉じてしまい、数時間後には再度燃料棒の露出が始まる、と前島から報告が入りました。

感想―――

本作中に幾度となくある電話での会話中にある「沈黙」シーン。吉田所長と前島、または村上との間で交わされるやり取りの中で息を止める瞬間からの沈黙、そののち、吐く息と共に発する言葉は非常に重いです。役所広司 光石研 竹野内豊・・・名優たちが魅せる「沈黙」は何とも言えず切なくて重い。

これで俺は生きて帰る訳にはいかなくなった…。みんなに何度も何度も無理を言って危険な場所に行かせている 所員の誰かが死ぬようなことがあれば、俺は生きて帰る訳にはいかない この事故が起こった時からそう決めていた。

そう言って空を見つめる吉田所長の苦悩を受け止める木下を演じる音尾琢真さんの演技に胸が押しつぶされそうです。5号機の副長であり、本作では所長の右腕的存在を演じていますが、実在の人物?

第7話 退去基準を決めてください

あらすじ―――

次々と入ってくる恐ろしい報告、対策本部もまた地獄のような状況。あらゆるスペースに怪我を負った人たちが収容され、まるで戦場のようです。

政府は「格納庫内は健全に保たれており、放射性物質が飛び取る可能性は低い」という信じられない発表をします。SNSでも「人災だ、犯人は行方不明になっている高比良と桐原」などといい加減なうわさが広まっていきます。

東電の村上副社長は「ドライウェルベント」を命じました。

ドライウェルベントとは放射能汚染物質を水に通さずにそのまま外に放出する、禁じ手ともいえる方法

「なんとかしろ!」と声を荒げる村上副社長に対し、ついに吉田所長もこれまで抑えていた感情をぶつけます「みんなやれることを必死でやっている、邪魔するな!」


4号機の地下に溜まっている海水を汲みあげて注水する作業が開始され、それで見つかったのは地震発生直後に4号機の様子を見に行ったきり行方不明になっていた高比良(岡本智礼)と桐原(鈴鹿央士)の遺体でした。

この若い二人の死亡を聞いて、初めて吉田は泣き崩れました。そこに追い打ちをかけるように前島から2号機の燃料棒がすべて露出したと報告がと入ります。

この報告を聞いて吉田は木下に大型バスを用意するように指示し、注水に係わる最小限のスタッフを残し退避させました。

感想―――

対策本部を官邸から東電本社に移しましたが、初めからそうすべきでしたね。政府側は東電が正確な情報を伝えてこないことに終始苛立ちを感じていましたし、公式発表も的外れでしたから。初めからそうしていれば無駄なやり取りがかなり省けたはずです。

吉田所長が撤退要請をした時「撤退は許さない、撤退したら東電は100%潰れる」は当時の菅直人元総理が言った内容です。それぞれの立場にいるトップが冷静な判断をし、まともな発言をできる状態ではなかった、そんな中でも終始冷静さを保ち続け、所員たちを励まし続けてきた吉田所長をどんな表現で表したらいいのか言葉が見つかりませんが、とにかくすごい人だと言いたい。

そんな吉田所長がついに声を荒げます。「邪魔するな!」そして若い作業員の死亡報告を聞いて涙するシーン、胸に詰まる思いでした。

また、部下の木下を演じる音尾琢真さんが本当にすごい演技をしていますね。所長の苦悩をくみ取りながら、励まし寄り添い続ける姿が印象的でした。

第8話 日本崩壊のシナリオ 最終回

あらすじ―――

桐原(鈴鹿央士)の遺体が発見された事が家族に伝えられました。桐原の父(遠藤憲一)は、この最悪の事態を予想していたような様子でした。母親(石田ゆり子)は事故が起こってから折り続けている千羽鶴を折る手が止まることはありませんでしたが、見つかった事に安堵の表情を浮かべたように見えました。

専門家の分析とシミュレーションによると、「このまま原子炉の制御ができない場合の、放射能の影響は首都圏にまで及び列島は2つに分断、国土の3分の1が数十年に渡り使えなくなる」というものでした。

海水を注入できないのであればと、東総理は自衛隊に上空からヘリによる散水作業を命令します。また、建設会社からの大型コンクリートポンプ車・キリンを使っての注水ができるのではないか?という提案を受け、採用を決めました。

上空からは自衛隊ヘリが散水を繰り返し、地上からは建設会社から提案された「大型コンクリートポンプ車・キリン」を使って大量の注水が行われました。大量の注水を続けた結果、原子炉の暴走を食い止める事ができ、最悪の事態を免れたのです。

制御を失った原発がなぜ落ち着いたのか、決定的な要因は特定できませんでした。

感想―――

これまでの感想で何度も述べてきましたが、このような事態になって初めてシミュレーションが行われるというのはどういう事なのか、驚愕しました。 原子力発電を受け入れる以前に、このようなあらゆるシミュレーションは行われているべきではないでしょうか?

この地震大国日本において「想定外の事態」では済まされないことが実際に起こってしまったのです。想定するべきなのです、あらゆる事態を。

電力会社はまだ原子力発電所を作ろうとしています。

つい先日「山口県上関町で計画されている原発建設予定地の海の埋め立て免許の期限を延長する(2023/6/6)」という中国電力に有利な手続きに対して、反対する住民グループが「住民監査請求」を出しました。

初めからなければ「放射能」の危険も心配をする必要もないのです。予定地近隣に住む者としては、計画がなくならない限りは不安要素は消えません。

 

さて、このドラマの感想を書くにあたり様々なリサーチをした中に「キリン」「というワードが出てきました。吉田所長が「キリンによる注水を始めて1時間で100トン近く注水できた」と副社長村上に報告しているシーンがあります。「キリン」ってなに?と疑問をもち調べた結果、そこには驚くべき事実がありました。

実際の被害の映像は世界中でも報道されており、中国においても被害の映像は連日報道されていました。
中国の「三一重工」では 72 m の高さまで生コンクリートを圧送できる機械を作っており、「我が社の機械ならピンポイントで原子炉に注水できるのではないか」と思ったそうです。

日本法人「三一日本(株)」社長はへリコプターや消防車、警察の放水車による注水作業をみてそのような装備では効果がないと思い、大型ポンプ車の日本法人の社長でポンプ車の特徴が分かっている自分が「誰も気付いてないなら、恥をかいてでも」動かなくてはと思った。

そして、新聞社、警察署、東京電力本社へ掛け合いましたが相手にされませんでした。それでも諦めずにコンタクトを試み続けた結果、ある議員の耳に届きついに提案が採用されるに至ったのだそうです。

その日のうちに機械購入が決定され、中国へ報告、送水テストを行った後すぐに工場から上海まで陸送され、2日後には大阪湾に陸揚げされました。その後福島へ。

陸送するための道路や橋の強度、また重機操作の指導を通常3か月かかるところを2日に凝縮して始動するなど、本当に多くの人々の手を経てキリンが福島に送られました。

そのキリン導入の結果、タンク内に規定水準の注水が行われ、核燃料の拡散は防がれました。結局、最終的には民間の建築会社の提案で最悪の事態は回避されたと言うことになると思います。しかもこのキリンは建築会社が購入して、政府に無償で提供されたと言うことでした。

最後にひとこと―――
マスコミの在り方について。情報番組は本作内でも実際の放送でもやっている事ですが、他社よりも注目を集めたいがために憶測だけの発言、小さなことを何倍にもして執拗に取り上げるスタイル。叩くばかりではなく協力してほしい、大きな影響力を持っているのだから。と強く思いました。

 

THE DAYS netflix 脚本と原作 評価は?キャスト相関図とあらすじのまとめ

netflixオリジナルドラマ『THE DAYS』についての感想を、できるだけフラットな視点で書いたつもりではありますが、事故現場から逃げる訳にも行かず、原子力を抑え込むために死ぬ気で戦っている人々の苦悩や焦りを見ていると、どうしても政府や電力会社の上層部への憤りを禁じ得ず、言及する形になってしまいました。

原子力エネルギーは諸刃の剣です。膨大なエネルギーと利益を得る代わりに、非常に大きなリスクを背負わなければなりません。これから私たちがどこに向かって進んでいくのか、子供や孫らに何を残せるのか、深く考えさせられる作品でした。

原発大推進の国「日本」に住む私たち、また世界中の多くの方々に見て頂きたい意義のあるドラマです。

最後までお付き合いくださってありがとうございました。〈Pinoko編集局〉

 

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