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TBSドラマ『笑うマトリョーシカ』は、早見和真の小説が原作。優秀な若き政治家が誰かに操られているのでは?という疑念を解き明かすミステリー作品です。
小説の主演は櫻井翔が演じる将来の総理候補と期待される若き政治家・清家一郎ですが、ドラマでは新聞記者・道上香苗を演じる水上あさみが主演として描かれたヒューマン政治サスペンスです。
この記事では『笑うマトリョーシカ』を原作とドラマの両面から、いったい誰が操っているのか、黒幕の正体と居眠り事故の真相について考察していきます。
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原作とドラマのネタバレ考察
まず、一番の注目は政治家役が妙に似合っている櫻井翔さんについての考察です。
櫻井翔さんがハマり役の理由は「当て書き」
ドラマの主演は記者役の水川あさみさんですが、そうは言っても嵐の櫻井翔さんがメインであることに間違いはないですね。
ただ、櫻井翔さんのお芝居は正直、上手いとは言えず表情も乏しく演技力に欠けるという評価が多いです。『笑うマトリョーシカ』ではかえってそれが「怪演」と高評価を受けていますが…。
いつも通りのセリフ棒読みが、かえってこのドラマではハマっていてますね。不気味さも相まって中身がない空っぽな傀儡(くぐつ)のようでした。
傀儡(くぐつ)というのは あやつり人形のこと。 自分の意志や主義を表さず、他人の言いなりに動いて利用されている者を指します。
第1話では清家の事務所を訪れた記者の道上が、飾ってあるマトリョーシカを見て「あの人形、先生のお顔にそっくりですね、笑顔が」というシーンがあります。
開けても開けても中から出てくるのは同じ笑顔が張り付いた、中身のない人形。
まるで、芝居下手の櫻井翔さんに対して、芝居が下手な役を当てたようには思えませんか?それがハマり過ぎていた、というプラス効果になっています。
なぜか…?
それもそのはず、原作者の早見和真氏は「謎多き政治家・清家一郎というキャラクターを書くにあたり、イメージしたのが櫻井翔さんだった」というのですから、ハマらないはずがありません。
つまり「当て書き」だったのです。
まさか、櫻井翔さんをイメージして作り上げた人物を、映像化にあたって本人が演じることになるとは思いもしなかったでしょう。
まさかの当て書きで生まれたキャラクター「謎に包まれた政治家・清家一郎」が櫻井翔さんでハマらないはずがありません。ドラマでは主役ではありませんが、目が離せませんね。
ドラマでの主演・新聞記者の道上香苗で演じているのは水川あさみさん。正直、水川あさみさんが主演というのはちょっとインパクトが弱いかな、という印象を持ちました。
ですが、いざふたを開けてみると安定感があって好演ぶりに安心しました。相手役の櫻井翔さんの怪演といいバランスが取れていて相乗効果が増しています!
有能な秘書・鈴木俊哉役の玉山鉄二さんについては、若い頃のカッコいいやんちゃな若者という印象とは打って変わって、最近では貫禄がある役柄が多く、それがまたよく似合っておられますね。
『シャイロックの子ども達』でも銀行の人事部調査役で、重要な役割を演じていました。芝居はうまいけど、目立つ役柄よりも「玉山鉄二がいるなら、面白いだろう」的な名バイプレーヤー寄りになってきている感じがします。
『笑うマトリョーシカ』の意味
『マトリョーシカ』とはロシアの代表的な民芸品で女性をかたどった入れ子人形です。ラテン語で「母」を意味する言葉が由来となっています。このことから、母親役がキーパーソンなのか?と、推察されます。
マトリョーシカには1つの人形の中に大きさを変えながらいくつもの人形が入っています。『笑うマトリョーシカ』では外側の人形が清家一郎だとすると、その中には操る者たちがいる、ということです。最後に現れるのは、いったい誰なのでしょう?
清家一郎には特殊な才能があって「自分」というものを持っていない代わりに、他人の意見をスポンジのように吸収し完コピできます。
そして、まるで自分が考えたかのように自分の意見として表現できる才能。
ヒトラーとヒトラーを陰で操っていた『ハヌッセン』がキーワードとしてあがっていますね。
エリック・ヤン・ハヌッセン
1889-1933 ドイツで活動した預言者をかたる手品師・占星術師
1931年 オカルトに傾倒しており、オカルト雑誌などを刊行。交霊会を開催し予言を伝える。
1932年 ヒトラーと交流を持つ。ヒトラーの演説を指導しヒトラーのお抱え預言者として活躍
1933年 暗殺される。理由は様々な説があるが不明。
周りにいる人間は清家一郎のその特殊能力に魅せられ、自分の思い通りに操ってみたいという衝動に駆られるのです。
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黒幕の正体は誰?
清家一郎の周りにはハヌッセンのように清家一郎を操り、力を持ちたいと願う野心家が集まりました。一郎を今の地位まで押し上げてきた3人の人物の中で、真のハヌッセンは誰なのでしょうか。
✅清家一郎を陰で操る同級生の鈴木俊哉
✅清家一郎の恋人で、一郎を鈴木の影響力から遠ざけようとする美恵子
✅色仕掛けで落とした鈴木俊哉を使って、美恵子から一郎を引き離そうとする一郎の母・浩子
母親 清家浩子
清家一郎は高校時代の生徒会立候補の演説で、鈴木俊哉の作ったシナリオにない発言をしていました。政治家になってからも、鈴木の作った原稿にない発言して、鈴木は困惑します。
鈴木は清家一郎を思うように操れていたと思っていましたが、実際にはそうではありませんでした。
一郎の幼少期から母親の清家浩子は、すべての面でマインドコントロールしていたのです。
一郎は官房長官になって最初の記者会見で「ヘイトスピーチ」に対する問題に着手する、と発表します。
【ヘイトスピーチとは】
特定の国の出身者であることや、その子孫であることを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたり、差別するなどの一方的な内容の言動などのことを言います。
これを聞いて記者たちはもちろん、一番驚いたのは鈴木でした。全く原稿にない発言だったからです。
しかし、同じくそれを聞いていた記者の道上香苗は、一郎の母親の浩子が別の場所で全く同じことを言っていた事に気づきました。
なぜ、浩子は一郎にそう言うように仕向けたのでしょうか?その理由は、浩子の出自にありました。
浩子は中国人の母親と日本兵の間に生まれ、幼少期から迫害を受けてきました。その為、一郎を総理大臣まで押し上げ、陰で操る事が日本人へ対する復讐と考えたのでした。
浩子は一郎の周りに集まる人物をもコントロールしていきました。
同じく一郎をコントロールしようとしていた恋人の美恵子が自分の手に負えない相手と知ると、同級生の鈴木を使って美恵子を排除しようとします。
肉体関係という餌を前に、鈴木はなすすべもなく浩子の言いなりになるのです。
このドラマの面白いところは、一方的にコントロールされるだけではありません。
操っていると思っていても、その実、操られていたりと精神を操り合う攻防戦が見ものでもあるのです。
秘書官 鈴木俊哉
清家一郎と鈴木俊哉は高校の同級生。学年1位の頭脳を持つ鈴木ですが、父親の事件が原因で自分自身が表舞台に立つことを諦めていました。
鈴木が表に立つ事ができない父親の事件とは『BG株事件』です。
【BG株事件】
28年前に不動産の利権絡みで起きた贈収賄事件
大手不動産会社ビッグガリバー社の未公開株が賄賂としてばらまかれる。
裏に政治家の関与が疑われたが、起訴されたのはビッグガリバー社の社長・宇野耕介のみ。
逮捕起訴されていたが、保釈中に自殺し事件は闇の中へ…。
関与したと疑われている大物政治家は3人。
✅外務大臣の諸橋育夫(矢島健一)
✅総理大臣の羽生雅文(大鷹明良)
✅元官房長官で清家一郎の実父・和田島芳孝(加藤雅也)故人
この時自殺した宇野耕介が鈴木俊哉の父親でした。父親の死後、俊哉は宇野から「鈴木」という母方の姓を名乗り、転居します。
転居した先の高校で清家一郎と、もう一人の同級生・佐々木光一と出会うことになります。
そして、清家一郎の特殊な能力に気が付いた野心家の鈴木は、自分の代わりに清家を陰で支え、操り表舞台にあげていくのです。
大学時代、清家に美恵子(演:田辺桃子)という恋人ができます。美恵子もまた清家を操り政治家にしようとします。母親の浩子や鈴木よりもさらに強い力で清家をコントロールし、そばに付きっきりで家にまで入り込み、浩子も辟易していました。
そこで浩子は鈴木を色仕掛けてコントロールし、美恵子を排除しようとします。この時、浩子と鈴木の間には何らかの秘密が生まれることになります。
清家一郎を入閣させ厚生労働大臣にまで押し上げた鈴木は「自分が誰よりも清家のことを理解し把握し、思い通りに操れている」と思い上がっていました。
新聞記者・道上香苗の登場で、清家との関係性が微妙に揺らいできました。また、清家の発言や行動を完璧にコントロールできていない、と感じるようになりました。
元恋人美恵子=真中亜里沙(三好美和子)
清家の大学時代に「美恵子」と名乗って近づき恋人関係になります。そして、母親や鈴木以上の強さで清家をコントロールするのでした。
本名は真中亜里沙と言いますが「三好美和子」という名前で関東テレビのシナリオコンクールに応募していました。
そのシナリオのテーマは政治で、モデルは清家。そして、なんと!作品のタイトルは「最後に笑うマトリョーシカ」だったのです。
第3話でタイトルの『笑うマトリョーシカ』が回収されましたー!早かったですね!
思い通りに一郎を育ててきた母親の浩子でしたが、まんまと恵美子に奪われてしまいます。家にまで入り込み、一郎を顎で使うような真似をする恵美子を浩子はどうしても排除したかった…。
そこで浩子は鈴木を使って、2人を引き離すように仕向けたのです。その後、恵美子は行方不明になりますが、そのくだりは明らかにはされていません。
香苗の取材で鈴木は恵美子には清家と別れた大学4年生の時以来、会っていないと言いますが、鈴木が殺害したのではないかと予想されます。
清家一郎
『笑うマトリョーシカ』の核にいるのは誰と思いますか? やはり清家一郎の存在も充分に考えられます。
幼少期から気弱で従順、行儀もよく人当りもさわやか…。純粋無垢で1人では何もできなさそうな少年はそのまま大きくなりました。
そんな一郎を、野心ある者たちは利用して高みに上がろうとします。しかし、そんな野心家たちよりも一郎が狡猾だったらどうでしょう?
ドラマでの冒頭に記者の道上香苗が飾ってあるマトリョーシカを見て「あの人形、先生のお顔にそっくりですね」といったセリフを思い出してください。
かなり重要なキーワードを第1話でもう発動しているのです。
居眠り運転事故死の真相
居眠り運転で殺害された人/道上兼高
『笑うマトリョーシカ』では居眠り運転で相手が死亡する事故がよく起こります。ドラマの第1話、冒頭でいきなり衝撃のシーンがありました。
新聞記者・道上香苗の父親で同じくジャーナリストの道上兼高(渡辺いっけい)が居眠り運転のトラックに激突され死亡します。
28年前の『BG株事件』をスクープした記者が兼高でした。この時は関与した政治家は突き止められませんでしたが、ビッグガリバー社の社長・宇野耕介を死なせてしまったことに責任を感じ、事件をずっと追いかけていた中で、鈴木俊哉と清家一郎について探りを入れていました。
道上兼高はドラマ版のオリジナルキャラクターですが、原作には同じようにして亡くなった人物が3人います。兼高の亡くなり方はこの3人をモデルにしています。
兼高の遺品の中には、BG株事件の資料と鈴木俊哉と清家一郎の写真などがあり、兼高が事件の真相に近づいたことが原因で殺害されたのか?と香苗は考えました。
そして、事務所を訪ねこの疑問を鈴木俊哉と清家一郎にぶつけます。更に先輩記者の山中(丸山智己)と共に、兼高が被害に遭った交通事故の加害者・黒瀬に接触します。
するとその後すぐに「黒瀬が自殺した」との連絡が入ります。事件の裏にいる何者かに殺害されたのではないか?という疑念がわく香苗達。
しかもそれは一介の個人の犯行ではなく、何らかの大きな組織のような動き方ではないですか?
居眠り運転で殺害された人/武智和宏
清家一郎は大学時代に友人の佐々木の引き合いで、次期官房長官と言われていた政治家・武智和宏に出会います。武智に気に入られた一郎は大学卒業後、私設秘書として働きました。
しかし、一郎が27歳のとき武智は自動車事故に巻き込まれて死亡しました。過労で居眠り運転をした車に突っ込まれて。
一郎は武智の地盤を引き継いで補欠選挙に出馬し、初当選を果たしたのです。
『笑うマトリョーシカ』において、居眠り運転の被害者として1番初めに殺害されたのが武智和宏です。
武智和宏が亡くなり、清家一郎が議員当選したことで、香苗は父親の事件と酷似している事に気が付きます。そして、武智和宏も兼高と同様に殺害されたのではないか?と考えるようになりました。
居眠り運転で殺害された人/清家嘉和
浩子はホステス時代に元官房長官の和田島と出会い、関係を持ちました。その後資産家の清家嘉和と出会い結婚、その時すでに浩子は妊娠していました。和田島との間にできた子供、それが一郎なのです。
清家嘉和は一郎が自分の子供ではないことを知っていたか知らずか、一郎が生まれて2~3年後に交通事故で亡くなっているのです。莫大な資産は浩子の手に渡りました。
浩子は清家嘉和の資産目当てに結婚したのではないでしょうか、そしてその資産を手に入れるために事故を装い殺害した…!?
居眠り運転で殺害されかかった人/鈴木俊哉
空き議席を作り、清家一郎を政治家にするため武智和宏を事故に装い殺害したのでは?と香苗から疑いをかけられていた鈴木。
しかし、兼高のときと同じように相手の居眠り運転被害にあって、命は取り留めたものの大けがを負い入院します。
これまでの「居眠り運転事故」に鈴木が関わっていたのではないかと疑っていた香苗でしたが、鈴木自身も狙われたことで、その可能性はゼロではありませんが薄くなりました。
居眠り運転で殺害された人考察
居眠り運転を装って殺害する、更には事故を起こした加害者も自殺する。こんなに同じ手口でいいのか?と思えるくらい単純すぎるし、そこがかえって興味深い設定でもあります。
なくなったときの状況と、亡くなった後に変わった事を参考に事件を考察してみました。
✅道上兼高――「BG株事件」絡みで鈴木と清家を追っていた矢先に事故に合う。
✅武智和宏――事故に合い死亡したことで、清家一郎が補欠当選して議員になれた
✅清家嘉和――事故に合い死亡したことで、遺産を浩子が受け継いだ
✅鈴木俊哉――なぜ狙われた???
大物政治家が関与されたとされる「BG株事件」を掘り起こして欲しくない者たちが兼高を殺害したように見えますが、武智和宏と清家嘉和が死亡したことは、その後の展開が明らかに清家一郎にとって都合のいいようになっています。
「BG株事件」と武智和宏に関して言えば、共通する人物は鈴木俊哉です。しかし、清家嘉和に関しては無関係。鈴木俊哉自身も狙われたので、事件とは関係なさそうに見えます。
全員と接点があるのは清家浩子です。鈴木俊哉が狙われたのも、一郎をコントロールするのに邪魔になったからと考えられます。
また、一郎の後援会長である佐々木光一(濱尾ノリタケ)と密に連絡を取り合っているシーンもありました。佐々木は料亭のオーナーで政界との太いパイプも持っています。
浩子も佐々木も「BG株事件」の黒幕である可能性が高く、特に総理大臣の羽生よりも権力を持っている外務大臣の諸橋育夫とつながっていると予想されます。
そこまでの大物が関わっているのであれば、4件もの「居眠り運転殺害」が実行されてもおかしくなはいと思いませんか?
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笑うマトリョーシカ 原作とドラマのネタバレ考察/黒幕の正体と、居眠り運転事故死の真相のまとめ
『黒幕の正体は誰?』という項目で黒幕の正体を匂わせましたか、だとしたら一連の出来事をどうやって行ってきたのか?
そこがこの物語の一番の見どころです。最後に笑うのが彼だとしたら?
個人的に1番気になっているシーンがあります。それは第1話で清家一郎が道上香苗に「僕を見ていてくださいね」また、第3話でも「僕の事、しっかり見ていてくださいね」と念を押します。
本当の僕は今見えている僕ではありませんよ、とでも言っているようではありませんか?一郎は初めから道上香苗には本性を明かしていたのかもしれませんね。
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